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吉江雅祥
(元朝日新聞写真出版部長)

デジタルカメラ その4
 キャノンは11月下旬に、コダックと共同開発の受光素子を使ったデジタルカメラEOS−1Dsを発売すると発表した。キヤノン・ホームページの製品情報を見ると、受像素子に35ミリフルサイズ1110万画素のCMOSセンサーを使っていると書いてある。

 9月25日からドイツ・ケルンで開かれたフォトキナにあわせて発表されたものだ。今年のフォトキナではデジタル関連で新製品の発表があったようだが詳しいことはネット情報にもあまり現れていない。

 このCMOSセンサーを使ってコダックも1000万画素超えの35ミリフルサイズ・センサー使用デジタルカメラを発表したようだ。すでに京セラがフィリップス製の35ミリフルサイズのCCD受光素子をつかったコンタックスN・digitalカメラを6月から発売している。来年度はどのメーカーも35ミリフィルムサイズの受光素子を使ったカメラがを発売するだろうと言われていた。

 私の知り合いの写真家、カメラマンの間では、当然そうなるだろうと言われていて、いまはAPSサイズ・センサーの一眼レフデジタルを使っているが、35ミリフルサイズ・センサーのカメラが発売されたら本格的にデジタルカメラ使用に替えようという話をしているから、とくに驚くことではなかったが、キヤノンの年内発売は予想より少し早かった。

 コンタックスN・dはメーカー希望価格80万円実際に売られている価格は60万円くらいだ。ネット情報によるとキヤノン1−Dsは定価100万円で実売価格80万円くらいだろうと言う説と、実売95万円という情報もあるようだ。いままでに発売されたAPSサイズ受光素子カメラにくらべてそれほど価格は高いとは思われない。

 受光素子あるいは受像素子が35ミリフルサイズになることがデジタルカメラにとってどんな意味をもつかは、実際にデジタルカメラを使用していると大変に明解で、1画素あたりの面積が狭くなると感度が下がり、ダイナミックレンジがせまくなり色の階調もせばめられる。

 精密度を高め解像度を上げようとすれば、銀塩フィルムではフイルムのサイズを広げることが一番簡単である。デジタルカメラでは受光素子の面積を大きくすることが同じような意味をもつが、一眼レフタイプのデジタルカメラに関しては、それだけではない価値がある。

 現在使われている一眼レフタイプのデジタルカメラはほとんどが、受光素子の大きさはAPSフィルムと同じくらいのサイズだ。従来のキヤノン、ニコンのレンズがそのまま使えるという宣伝文句は間違いではないが、焦点距離が同じでも画角が違う。

 おおざっぱに言って、APSサイズ・センサーのデジタルカメラでは35ミリ銀塩カメラと比較すると、焦点距離の1.5倍のレンズを使用するのと同じ画角の感じになる。24ミリレンズをつかって35ミリレンズと同じ画角ということである。

 それならば広角レンズをつかえば問題はないと思われるが、実際に使ってみると、戸惑ってしまう。私は昨年の春からニコンD−1Xを使っているが、長年ニコンFなどの一眼レフ使っていたからレンズの焦点距離に対するある感覚が出来ていて、ファインダーをのぞく以前に一つのレンズの焦点距離に対するフレーミングが決まっている。

 だから、ニコンF4あるいはF5をつかっていてD−1Xをつかうと、このフレーミングのギャップがどうしてもつきまとう。ファインダーをのぞいたときの大きさの違いは大きい。ファインダーをのぞいてから改めてフレーミングをし直すような感じがあって、カメラ初心者になって写真を撮らなければいけない。フルサイズ35ミリになれば、この感覚のずれだけは感じないですむだろう。

 これは私だけが感じていることではなくて、銀塩35ミリカメラの経験が長ければ長いほどこの感覚のずれを感じるだろう。現在はコンタックスN・dだけが35ミリフルサイズカメラだ、これはまだ使ったことがないから、その性能や感触、使い良さなどについてよくわからない。

 このカメラをテストした友人の話では、コンタックスは、これまでの30万40万画素からはじまったデジタル・カメラ競争を経ないで、いきなり35ミリフルサイズの高級デジタルカメラを発売したため、ユーザーの好みなどが反映されていないため、色の調整など、まだまだ納得出来ないところがあるが、銀塩一眼レフカメラの感覚で撮影できるのでデジタルだと言って身構える必要がないのがよいと言っていた。

 キヤノンEOS−1DsはセンサーにCMOSをつかっている。コンタックスDsのCCDは2枚張り合わせと言われている。1枚CCDで35ミリフルサイズがいつ完成するのか、すでにできているのか、センサーの優劣についてはいろいろ言われているが、実際のことは使ってみてはじめてわかることだろう。

 ここまで書いていたらアサヒカメラ11月号が届いた、フォトキナ情報とEOS−1Dsの使用記、そうして詳細な紹介が載っている。もう一つフォトキナで発表された、コダックDCSPro14nのデビュー記事が載っている。こちらは35ミリフルサイズCMOS受光素子を使った一眼レフだ。アメリカでは年内発売、日本では来年2月発売だそうである。

 キヤノンと同じCMOSのようだが1371万画素、キヤノンとことなりCMOSセンサーに擬色軽減用のローパスフィルターが入っていないという。この辺の色情報の処理の違いは実際に使ってみないとわからない。

 ボディーのベースはニコンF−80をつかっているそうで、当然ニコン・レンズが使える。米国での売値は5000ドルだそうだから、キヤノンよりは大分安いことになる。

 こうなってくると余計、ニコンがどのような35ミリ・フルサイズ・センサーをつかったデジタルカメラを出すのかこれも楽しみである。デジタルカメラについては、ニコンが加わってからが本当の意味で評価がはじまると思うのだ。

 現在のところデジタルカメラを評するのに、銀塩フィルムカメラとの差だけで論じられているところがあるが、35ミリデジタルカメラが出そろってきて、はじめて本当の評価がなされることになると思う。

写真説明 (1)キヤノン EOS−1Ds
(2)コンタックス N digital
(3)KODAK DCS Pro 14n