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吉江雅祥
(元朝日新聞写真出版部長)

マクロ撮影
 3月から4月にかけて、300万画素を超えるパーソナルユースのデジタルカメラが10機種も発売になった。そのうち8社のカメラが334万画素でCCDの面積も共通である。フジのファイン・ピックス4700はハニカムCCDを使用して432万画素と称していてCCDの面積もわずかにちがう。もう1社東芝のカメラが337万画素となっている。

 多分ほとんどがソニーの開発したCCDを使っているのだろう。334万画素と簡単にいうが、小生がはじめて使ったカシオQV30は25万画素であった。1995年のことだからわずか5年ほど前のことだ。あのとき買おうと思ったオリンパスのデジタルカメラが20万円くらいして38万画素であった。

 カシオQV30は接続キットを入れると6万円くらいした。カメラの値段はそのままで画素数は4年前の10倍だ。20〜30万画素のときは、プリンターの性能もよくなかったからプリントして銀塩写真のプリントと比較して見ようなどとは夢にも思わなかったが、300万画素を超えると、デジタルカメラで撮影した写真を8×10にプリント出力したものならば、かなり銀塩写真の表現にちかい。

 200万画素クラスで、キャビネ判なら、まーまー見られるよ。と言っていたのが、あっと言う間に8倍から10倍だから恐ろしいくらいの進歩である。デジタルカメラが銀塩カメラに代わる分野はどんどんひろがっている。

 新聞社の写真部から暗室が消えたという話は以前に書いたが、今年2月、朝日新聞の写真部へいって写真部のデジタル化の現在の状況を聞いた。現在、夕刊の取材の80パーセント以上がデジタルカメラによる撮影だそうである。

 取材先でデジタルカメラで撮影してこれをノートパソコンを通して送る。東京近辺ならばほとんどがPHSによる送稿だそうだ。PHSがだめなところはケイタイで送る。PHSを使うのは送稿速度が速いからである。

 地域によってことなるが用意さえしていけば、世界中ほとんど、どこからでも電話線なしで写真を東京写真部あてに送ることが出来るそうである。これだけ送稿が簡単であると、2年さきには新聞社ではデジタルカメラが100パーセントにちかく使用されるのは間違いないようだ。

 今、小生がやっているのは、リバーサル・カラーフィルムで撮影した写真を、一方はスキャナーでPCに取り込み、ほとんど手を加えずに最新のインク・ジェット・プリンターで出力プリントしたものと、もう一つは同じフィルムを同じ寸法でカラーラボで引き延ばしてもらい。この写真を比較して見ることだ。

 つまり銀塩写真とデジタルとの比較ということだが、同じ大きさに伸ばしたものを見ると、どんなによいと言われるプリント用紙を使っても、やはりこれは銀塩カラーの発色にはどうしても及ばないところがあるのがわかる。

 さてこのデジタルカメラなのだが、どのカメラもが補助レンズなどつけずにマクロ撮影が出来るようになっている。ほとんどのカメラが20センチから30センチのマクロ撮影が出来るし、スーパーマクロ機能のあるカメラは10センチよりもっとちかづいて接写ができる。デジタルカメラの資質の一つはマクロ撮影が簡単にできることなのだ。

 もちろん最近のコンパクトカメラでも最短撮影距離は30センチ−40センチのものが多いがデジタルカメラではますますこの傾向がつよくなってきた。
 昨年、小生が買ったデジタルカメラの1台、オリンパス2500Lは画素数250万画素だから、最新のパーソナルユース・カメラには画素数でおよばないが、簡単に接写ができるものだから、いつも持ち歩いている。

 このカメラではレンズの直前2センチの撮影が可能だ。等倍よりも少し大きく写る感じである。10円銅貨の外周が切れて写るくらいの接写ができる。庭にゼラニュームが咲いているからこれを撮影すると、花びら五枚の花一輪の大きさで直径が2センチほどの花がだいぶ切れて写る。

 掲載(写真1)がオリンパス2500Lで撮影した2センチ接写の写真である。

 たしか昔使っていた接写用のベローズが仕舞ってあったはずだと思い、物置のがらくた箱を探したらニコンF用のモデルIIIというベローズが箱入りで出てきた。化粧箱の表書きをみると、これにはベローズ・フォーカシング・アタッチメント・モデルIIIと商品名がついていた。箱もきれいで新品同様つかった形跡がない。

 この蛇腹は円筒型になっている。私の記憶では確か角形のベローズがあって、撮影にはこの方をよく使ったように覚えている。等倍以上の撮影のときはレンズを逆向きに取り付けて使った。蛇腹を支える支柱には蛇腹の伸びた距離20ミリから140ミリまで目盛りがついている。

 このベローズを使ってデジタルカメラの最短接写と同じくらいの接写をしようと思うと、5センチのレンズをつけてベローズの延長の目盛りは14センチほど伸ばさなければいけない。

 掲載(写真2)のニコンFにベローズを取り付けた写真が、ちょうど蛇腹を14センチ伸ばした状態のものである。

 ベローズの説明書には、使用レンズによる撮影倍率対照表がついていて、これで撮影の倍率を出し。さらに説明書についている露出倍数票によって露出をきめるようになっている。

 一番倍率が高いのは24ミリレンズを逆につけ最大限に蛇腹を伸ばすと8.5倍の倍率で撮影でき、このときの露出倍数は90倍になっていて、これを絞り値に換算すると絞りを開く量は6.5段と計算されます。

 あらためて計算をしてみたが、そこに出てくる数値は想像以上に大きくて、あれ、こんなに露出をかけなければいけないのかとためらってしまうほどである。それで撮影しても確かではありませんから、今の時代、昔の道具をつかってやってみるとマクロ撮影の難しさは大変であったと考えさせられます。

 それがデジタルカメラでは簡単だ、プログラム露出すれば露出に関してはまったくなにも考える必要がない。これはオート露出の一眼レフでも同じである。フィルム面かその近くで到達する光を計るのだから、実に正確である。

 40年以上も前のことを持ち出して話をしても陳腐なことかもしれないが、キャノンのA1のことを書いていて話が接写の話になってしまった。