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吉江雅祥
(元朝日新聞写真出版部長)

コンパクトデジタルカメラ
 アマチュアの写真コンテスト授賞パーティに出席した。アマチュア写真家たちが受賞者である。出席者は高年齢層の人がかなり多かった。女性の数も多い。賞状をもらっているとき写真を撮りあったり、パーティのときも記念写真を撮るのに皆さんにぎやかで忙しい。気をつけてみるとカメラのほとんどがデジタルコンパクトカメラである。

 この人たちは自分の作品を撮るためには、ほとんどが銀塩一眼レフカメラを使っている。でも記念写真を撮ったり、メモ的な撮影ではデジタルコンパクトカメラを使用している。どこへ出かけるのにもデジタルコンパクトカメラは離さない人が多い。

 デジタルカメラを胸ポケットに入れて持ち歩くのが格好いいスタイルになっているようである。一人がカメラを取り出すと、私も持っていますよとばかり次から次へとカメラが現れてくる。どうもデジタルカメラは小さいことが自慢の種のようだ。

 数人、集まってカメラを見せあっているうちに、新製品を持ってきている人がいた。このカメラが俄然、注目を集めたのである。注目を集めたのは液晶画面の大きさだった。そうなるとみんなが自分のカメラの液晶画面と比較しはじめた。

 ほとんどが1.5インチの液晶だが、同じ1.5インチでも、それぞれ違っていて画面の見やすいものもあるし、見にくい物もある。明るさも違う。いままでデジタルカメラを並べてそんな比較などしたことないのから、比べて見て改めて驚いたようである。

 デジタルコンパクト機が愛用されるようになって、写真の撮影法が変わった。何が変わったと言ってアイレベルの光学ファインダーを使わず、液晶画面をファインダーにして写すようになったことだ。

 カメラの背面から目を10センチ以上も離して液晶画面を見て写すのが普通になった。初期のデジタルカメラは液晶モニターもついていますよ。というオマケ的存在だったが、いまでは撮影上欠くことの出来ない、きわめて大事な存在になってしまった。

 前置きが長くなってしまったが、会場で注目された新製品は、ソニーのサイバーショットDSC−T1だった。背面についている2.5インチ液晶画面の大きさにはみんな驚いていた。1.5インチ画面とのあまりにも違う大きさだ。

 DSC−T1は去年の11月に発売されたばかりだ。TVのコマーシャルでも、いかに薄いかを宣伝中のカメラだ。厚さは21ミリである。カタログには一番薄いところは17ミリと書いてある。

 デジタルカメラはここ一、二年はいかに小さく、いかに薄く作るかがカメラメーカーの競争のようだった。小型化競争だ。カメラは小さすぎると手ブレがして駄目だと言われると、手ブレ防止機構を組み込んだカメラが現れた。TVコマーシャルっで浜崎あゆみが登場して、「AYUはブレない」と宣伝しているパナソニックのデジタルカメラだ。

 このLUMIX−FX5の手ブレ補正ジャイロ機構は、店頭のデモで実際に撮影してみたが、凄い機能をコンパクトカメラに持ち込んだものだと思うし、なるほどと思ったのだが、ソニーのT−1の液晶画面の大きいのを見せられたほうがはショックだった。

 カメラ好きの連中が集まっているのだから、新製品を見れば注目するのは当然のことだが、このカメラの液晶画面に対するみんなの関心は異常だった。

 小生はコンパクトカメラにはあまり興味がなかったから、そのとき初めてこのカメラを手にとって見た。91ミリ×60ミリ×21ミリ・重量180グラムだから確かに小さい。撮影用に液晶をONにして見せてもらったが、背面の液晶を見てとにかく驚いてしまう。画面の横幅が50ミリ以上ある。2.5インチ液晶というのは対角線66.5ミリだからよこはば50ミリ以上あるのはあたりまえのことだ。

 それに画面の明るさだ。暗いところではもちろん明るいところにカメラをむけると対応しれ明るさを調節する。他のカメラでもハイブリッド・オートブライド機構は付いているものもあるがモニターが大きいから目立つ。手に取った連中がとにかくみんな驚いていて感心していた。

 小生は現在デジタル機で愛用しているのはニコンD−1XとオリンパスのE−10である。どちらも3年以上使っているが液晶モニターに写る画像を見て写真を写したことはない。カメラ上部に付いているファインダーを使う。撮影済みの画像を見ることがあるが焦点が合っているかどうかはわからないからあまり利用価値はない。

 一眼レフタイプのデジタルカメラを使っている人たちに聞いてみると液晶モニターを撮影に使っている人はあまりいないようだ。

 しかし、デジタルコンパクト機になると何故か液晶画面をファインダーにして撮影する。かなり写真をやっていた人たちがそうなのだから、デジタルコンパクト機を初めてつかう人はそれが普通になっている。

 液晶画面をファインダーとして考えてみると、これは画面が大きい方が優れているのは当然である。2.5インチの液晶画面をみたら従来の1インチ画面などはオモチャに見えてしまう。

 あまり眼の良くない小生でも、焦点が合ったかどうかまでかなりはっきりと見える。このカメラは光学式のファインダを捨ててしまっている。他のデジタルコンパクト機の中にもついていないものもあるが、これほど徹底はしていない。

 ソニーのサイバーショットT1はこの大きな液晶画面をファインダーにして、光学ファインダーを思い切って付けなかったことで、画期的なカメラになったと思う。パーティでこのカメラを見た人は、コンパクトカメラを選ぶ基準に液晶の画面の大きさ見やすさを念頭に置くだろう。

 この会合の帰りに渋谷のカメラ量販店に出かけて知り合いの店員さんにコンパクトデジタルカメラをゆっくりと見せてもらった。T−1の売れ行きを聞いてみたら、デジタルコンパクトカメラは3万円台のものが売れる。T−1は値段が5万円以上なので少しマニアックな人たちに人気がある。T−1にはもうすぐブラックタイプが追加発売されるが結構予約注文が入っていると言っていた。

 大きい液晶画面で気になるのは電池の寿命だろう。何が電気を食うと言って液晶が一番電池を消耗する。店頭で改めて聞いてみたら、新品電池で液晶を付けっぱなしで80時間持ちますと言っていたから大丈夫だろう。

 デジタルコンパクト機を買うお客さんは機能的にこれが付いていなければとか、あまり注文を付ける人はいないそうである。女性は小さくて格好の良いものを買っていくそうだ。小さく薄いが選ぶ基準になっているようだ。

写真説明
(1)ソニー・サイバーショット・T−1
液晶画面は2.5型現在市販されているコンパクトタイプのデジタルカメラでは一番大きい。3月半ばにブラックタイプが発売された。
(2)パナソニック・ルミックス・DMC−FX5
「Ayuはぶれない」のTVコマーシャルで人気を煽っている。手ブレ補正ジャイロ搭載のルミックスDMC−FX5コンパクトカメラ