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年の瀬におもうこと

遠くの高架線を
電車が走り抜ける音がする
もう、そろそろ終電の時刻
年の瀬の押しつまった
雨の金曜日
忘年会があちらこちらで最高潮に盛り上がり
傘を持つ手もなにやらせわしなく
大きな居酒屋のものすごい喧騒のなかで
私もお酒をのんで、カラオケやって
帰ってきた
顔がまだ 火照っている
からだが さすがにだるい
このときとばかりに、こう何日も何日も
人と会って、お酒を飲むこともないと思うが
それがまた、楽しかったりもするのだから
自業自得だ
明日がお休みなのが うれしい
ひさびさにゆっくり 朝寝坊ができる
私は元来、寝不足に弱いたちなのに
今年はよく、こんな忙しい日々を
乗り切れてきたもんだ
学生のときは、寝たいときに寝て
起きたいときに起きたり
けっこうしていた
今年は、大きな仕事がいくつかあって
その、どれもが まずまずの出来で
総じて いい年だった と
いえるだろう一一か
満足といえば満足だし
以前のような、誇りたくなるような
充実した達成感とは、ちよっと
違うようにもおもう
相変わらずいろいろな人に会って一一
やっぱり、ちょっと違う
会社の同僚が、またCDを賃してくれた
私のあまり好きでないアーティストだが
とにかく、だまされたとおもって、なんて
もう、何回だまされただろう
一回ば必ず聴いてあげる
でも、途中でやめるかも
基本的に趣昧が違うのだ
まあ、根はいい人だから
つい、きちんといわないから
気に入っているとおもっているのだろうか
こまってしまう
濡れた路面を引きずるように
車が通りすぎる
来年は、いい年になるだろうか
せめて、もう少しのんびりと
過ごしてみたいな、なんて
ここ何年かは、毎年のように
考えているような 気がする


木は……

この木は、わたしのお気に入りの木
枝葉をこんなにも大きく広げ、天空に向かって
スーッと伸びていくことを目指して
でも、何年もかかって 少しずつ少しずつ
着実に伸びていく
気がつくと、大きくなっているな
と、おもう
幹も太くなってきた
枝もずいぶんと四方に伸びてきた
葉は青々と生い茂り
冬のやわらかい木漏れ日が、心地いい
風が吹いている
さわさわとゆれる枝葉
そのやさしさ
そのたくましさ
ここまで何年かかって、おまえは
これほどまでになったのか
しかも、こんなに広々としたところに
たった一本
だれの助けも借りず
しかし木は、ただもっと伸び
枝葉を茂らせそうすることで、人や動物や
虫や花や草が
その下で憩うであろうことを
そうすることが木の誇りであるかのように
知っていて
にぎやかで、ときにわがままな生きものたちが
木をこまらせるようなことをしても
木は、ただただそこにいて
なにに動じることもなく
木陰を、木漏れ日を
与えつづける


MODEL: Wang Ying
Stylist & Hair Make up: Noriko Sasaki