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Special

HIROSE Hisaki

Vestigia lucis temporis

 19世紀の写真の登場以来、写真家は様々な歴史的出来事の中に観察者として写真を撮影することで参加してきた。その中では、写真家自身生命の危険にさらされるリスクを負って撮影されたものも数多い。しかし、写真家は社会からただの傍観者として、物見高い野次馬として批判されがちだ。
 今回の受賞作は、僕自身が懐中電灯を当てて、僕自身が興味を持って見たところだけを映像として定着させたものだ。定常光で撮られる写真は、映像としては写真に撮らなくてもその場に存在するが、僕のこの写真は、フィルムに定着させないとただの光の点の動きでしかない。この映像は、カメラのフレームの中に僕自身が参加し、僕自身がある一定の時間に動き回り光を当てた痕跡なのだ。
 僕はこういった行為によって、写真の肉体的な体験を試みている。




本作品は、2001年度の上野彦馬賞「毎日新聞社賞」受賞作です。
また、作品は、2002年2月15〜23日に東京都写真美術館で行われる上野彦馬賞作品展に展示されます。(編集部)