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Special

Atsuko FUJIWARA



パンドラの箱

フェンスの前で足が止まった。整然とした公園の中で、その一角だけが、
野放しだった。草むらに足を踏み入れると突如、視界が広がった。
辺り一面、奔放に伸びた木々が、光を欲しいままに揺らいでいる。
近づけば、全ての輪郭が失われ、陽炎のように消えてしまう曖昧な風景。
静けさの中で、木々の呼吸のみが、かすかに聞こえた。




後でわかったことだが、そこは杉並区の貯水池の上に造られたものであった。
この不可思議な空間の正体は、水を守るために存在する、水の番人だったのだ。
抗いがたい魅力を感じて、誘われるように中へ入っていった時のことをふりかえると、
水のエネルギーに身体が反応したのかとさえ思える。


同名の写真展が、ギャラリーアートグラフで開催されます。
開催期間:1998年11月4日(水)〜1998年11月10日(火)