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Special

Hitoshi TSUKIJI

 土地神話崩壊と同時進行して都市の中に空地がふえていった。虫が食った葉のように空地に地表が見える。家が消え、路地もなくなり、人間の痕跡のある荒地に立つと、いままで知ることができなかった都市のはじまりを体験してしまう。経済の破綻がイメージの都市から、都市の元型を実感できるものにした。
 鉄、アルミニューム、ガラスとコンクリートからつくられた巨大な建築にとりかこまれた空地。このヒューマンサイズの町や家から人は流民になった。経済によって空けられた場所は現代という名がつけられたイコンのように見えてくる。
 現代の都市ではあらゆる領域で反対物を共存させているが、東京は例外だ。新しいものは歓迎され、古いものは跡かたもなく消えてしまう。空地を見ると心をほっとさせ、眼をなごませる一瞬を与えてくれるが、都市の中に意図的に調和を求め、理想としての人工をつくる動きははじまっている。写真で都市を探査することが人間から遠い見えない動きを見えるようにすることにつながっていくのではないだろうか。