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Special

YOSHIMURA Akira

目を閉じて前に進む

 たとえば、ベータなどのVTRはアナログ画像だが、CCD受光素子が使われているために画素が走査線上に規則的に並んでいる。
 これがVTR(はしつこいようだかアナログ)とデジタル画像が酷似している理由なのだが、銀塩写真の場合は銀塩色素粒子がランダムに集合体をなしているわけだから、画像をいくら拡大しても濃淡のみだけでエッジが存在しない。
 これが、銀塩とCCDにより描出されるリアリティの差の決定的な要因なのである。
 両者のちがいを端的にいえば、銀塩画像は対象との心理的距離が断続的で、イメージに奥行きがあるのだが、電子画像は対象にべたっと密着しているのだ。
 われわれの脳は、視野に存在するグラデーションの強弱を線に認識するという作業をつねに行っているわけだが、電子画像は、その少々だが複雑な作業を省略させてくれるのある。