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 長く広告写真や女性ポートレイトの世界で活躍され、最近も和紙などに乳剤を塗って写真をプリントされた作品を発表されたりとご活躍の藤井秀樹先生。40年近くにわたる先生の「写真人生」を熱く語っていただきます。

編集部(以下 編):今日は、PASTの次のお仕事をお伺いしたいのですが。
藤井秀樹先生(以下 藤):では、「からだ化粧」について、それをはじめた経緯についてお話ししましょう。
 新しい表現を模索している折りに、ドイツの協会から招待されてワークショップに行きました。十文字美信、藤原新也、横尾忠則といった個性的なメンバーと共にドイツへ行き、非常によいワークショップになりました。
 その後、ヨーロッパの国々に呼ばれて何度も講演をしました。
 それらの国々を訪れるたびに感じたことは、日本にいて、フランスのカメラマンの真似をしても通用しないし、ニューヨークのカメラマンの真似をしても通用しないということでした。
 日本人でなければ撮れない日本の写真というものを、インターナショナルなマーケットを意識すればするほど、痛感させられました。
 麻生恒二さんと一緒にやった仕事、白塗りのヌードや赤い袴に櫛を持った作品、能面の作品などが、外国で評価を受け、典型的な日本の写真のエロティシズムだといわれてヴォーグやバザーなどの雑誌に使われたのは、日本の強いオリジナリティがあったからなのでしょう。
 その頃、イメージバンクという会社ができました。現在では、ヨーロッパを拠点に、世界50ヶ国、200ヶ所くらいにオフィスがある非常に大きなストックフォトエージェンシーで、世界トップのフォトグラファーの写真しか扱わないという方針の会社です。
 そのイメージバンクから、「日本ではお前と契約したい」というオファーを受け、それは現在まで続いています。
 今まで一番金をくれたのがイメージバンクではないでしょうか。(笑)
 その組織は、インターナショナルであるがために非常便利で、パリへ行ったら、パリのイメージバンクへ顔を出す、ロスならロスのオフィスへ、ドイツならドイツの、という具合に、世界中のオフィスが自分のオフィスのように使うことができます。
 さらに、その会社と契約することによって、世界のトップレベルのカメラマンと知り合うことや話す機会を非常に多く持つことができました。それによって、知らず知らずのうちにインターナショナルな感覚を身につけることが出来たのです。
 彼らが「よい」という写真は、日本的な写真です。ヨーロッパ的なものは向こうにかなうはずがありませんからね。
 そこで、日本的な写真とはなんだろう、という研究を続けました。
 それが、歌舞伎であり、能面であり、麻生恒二さんとの仕事であり、「からだ化粧」だったのです。
 日本には、伝統的に入れ墨があります。
 しかし、そこにはある色は、朱と青だけです。
 当時、コーセー化粧品の美容部長だった小林照子さんと話をしまして、女性の身体をキャンバスにして絵を描いてみたい。ヒントはタトゥーだが、あれをもっとカラフルなものにしたい。ということで、最初「炎」を描きました。
 「からだ化粧」という写真展は、非常に大きな反響を呼びまして、東京、パリ、ドイツ、ニューヨークでも写真展をし、イメージバンクにも売れ、写真集も完売してしまいました。
 写真集については、現在再販の話が出ています。よい仕事というのは、いつまでも残るものだと感じています。
 「からだ化粧」は、メーアップアーティストと組むというスタイルで行われた、日本で最初の仕事だったのではないでしょうか。
編:ありがとうございました。次号は、その日本的、というところを突き詰めたお話しをよろしくお願い致します。