フォトルポ

北欧フォト紀行2

白夜の国のジプシー II

中野 正貴



フィンランドジプシーの子どもたち

 ヘルシンキ中央駅へつながる広い空き地の一角に、ぽつんとたった白いテント。夕方になると、月に一度の礼拝のため、たくさんのジプシー家族がこの“青空教会”にやって来る。
 テントの中では大人たちによる「アーメン!」の大合唱が続き、その間、子どもたちはテントのまわりを無邪気に駆けまわっている。彼らにとってここは、仲間の集まる格好の遊び場なのだ。
 ジプシーの人たちはよく笑う。それは、全身からの笑いだ。子どもから大人まで、生まれたままの純真さを失っていない。生後間もない赤ちゃんが時折見せる、はちきれんばかりの笑顔に思わず背筋がゾクッとするような場面もあった。
 ジプシーの子どもたちの笑顔には、単に子ども特有のかわいらしさからくるのではなく、むしろ、どこか落ちつきのある完成された魅力が含まれている。
 私の腕をぐいっと引っ張って写真を撮ってとせがんでみせるあどけなさとは対照的に、ポーズをとった彼らからは、貫禄すら感じられた。
 無邪気に飛びまわる彼らを夢中で追いかけながら、私はシャッターを切り続けた。

音声ファイル(au): 男の子の声(162K)  説教(136K)  合唱(247K)